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ハーピー

Fantasy
Horror ★★★★
Healing
Eroticism ★★★★


 Story(はーぴー)

 高校生の佐和は、いつの頃からか、編入生の川堀苑子のことが気にかかって仕方がなかった。彼女がつけている香水を死臭と感じ、彼女の美しい色気を禍々しいものとして恐れ、いつしか彼女を「ハーピー」という怪物に仕立て上げていくようになる。彼の妄想は膨らみ続け、ついにシャワー室で彼女の首をしめて殺そうとする。そして「彼女の背中にはねがある」と言い張る彼は、精神を病んでいると診断される。

 独特のニオイ、男をたぶらかすエロティシズム、足の速さ、名前・・・川堀苑子のすべてが佐和にはハーピーに思えた。彼女のことが気にかかってどうしようもなく妄想が膨らんだのかもしれないが、しかし、本当に彼の妄想だったのだろうか。山岸凉子さんの描く川堀苑子があまりにもハーピーのイメージなので、読み手の気持ちは確信を得られないまま宙に浮くことになる。



Key Word Origin
ハーピー(ハルピュイア) ギリシャ神話

 

 顔と胸までが人間の女性で、あとは巨大な鳥の姿をした怪物。女面鳥獣。もとはゼウスが飼っていたといわれるが、アルゴー・ノート(アルゴー探検隊)では非常に野蛮で汚らわしいものとして描写されている。ギリシャ神話では、ハルピュイアという名で登場するが、これは「かすめとる者」「むしりとる者」という意。 いつもお腹を空かせており、食べ物めあてに人間を襲ったり、また腐った肉や屍肉を食らうともいわれている。本来はクレタにおける女神で、つむじ風や竜巻を神の仕業と考えたことから生まれたらしい。
 大地の女神ガイアと不毛の海ポントスが交わって、まずタウマスという怪物が生まれた。このタウマスが、海神オケアノスの娘エレクトラと交わってハルピュイアが生まれたという。これは、神話の最初の部分、天地創造のくだりで書かれている。ハーピーは、虹の神イーリスと姉妹関係にあることになり、誕生した頃のハーピーたちは、風をつかさどる、美しい巻き髪を持つ女性たちであったが、アルゴ・ノートの物語以降、その姿は醜く変えられてしまったようだ。ハーピーのモデルは猛禽類の王者ハゲ鷹ともいわれている。
 川堀苑子の「ハーピー」のイメージは、ギリシャ神話で語られるハーピー像とはずいぶん異なっている。コウモリの黒いはね、かっと見開いた目、悪魔のような長い耳、そして耳まで裂けた口。

 「妖精王」にも、ハーピーが登場する。

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