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パゾリーニのポートレイト ピエル・パオロ・パゾリーニ
ピエル・パオロ・パゾリーニ
1922年イタリア生まれ
1975年没
WORKS  REVIEW  NOTE  PROFILE  DIRECTOR
 
★は個人的評価です

WORKS
1955 河の女 脚本
監督:マリオ・ソルダーティ
出演:ソフィア・ローレン、リク・バッタリア
1957 カリビアの夜 脚本助手
監督:フェデリコ・フェリーニ
出演:ジュリエッタ・マシーナ、フランソワ・ペリエ
1959 狂った夜 脚本
監督:マウロ・ボロニーニ
出演:エルザ・マルティネリ、アントネッラ・ルアルディ
1960 残酷な夜 脚本
監督:フロレスタノ・ヴァンチーニ
原作:ジョルジオ・バッサーニ
出演:ベリンダ・リー、ガブリエル・フェルゼッティ
1960 汚れなき抱擁 脚本
監督:マウロ・ボロニーニ
原作:ヴィタリアーノ・ブランカーティ
出演:マルチェロ・マストロヤンニ、クラウディア・カルディナーレ
1960 狂った情事 脚本
監督:マウロ・ボロニーニ
出演:ジャン・ソレル、ジャンヌ・ヴァレリー
1960 飾り窓の女 脚本
監督:ルチアーノ・エンメル
出演:リノ・ヴァンチュラ、マリナ・ヴラディ
1961 アッカトーネ(未) 監督・脚本 ★★★
出演:フランコ・チッティ、フランカ・パスット、ロベルト・スカリンジェッラ、アドリアーナ・アスティ、シルヴァーナ・コルシーニ
貧民街に暮らすアッカトーネと呼ばれる娼婦のヒモ男。彼は仕事もせず、気のあった仲間とその日暮らしを続けていた。あるときステッラという娘に恋をしてまじめに働こうとしたが続かない。そしてかっぱらいをして、あっけなく死んでしまう。死の場面でバッハの「マタイ受難曲」が流れたのが印象的。
パゾリーニの監督デビュー作品。
1962 マンマ・ローマ(未) 監督・脚本 ★★
出演:アンナ・マニャーニ、エットーレ・ガロファーロ、フランコ・チッティ、シルヴァーナ・コルシーニ
エットレの母親は娼婦だったが、彼女は娼婦をやめ息子と新しい生活を始めようとする。しかしエットレは不良少年の仲間に入り、死んでしまう。
死の場面にはマンテーニャの
「死せるキリスト」の構図が引用されている。
1962 殺し 原案
監督:ベルナルド・ベルトルッチ
出演:フランチェスコ・ルイウ、ジャンカルロ・デ・ローザ
1963 ロゴパグ 監督 ★★
監督:ロベルト・ロッセリーニ、ジャン=リュック・ゴダール、ウーゴ・グレゴレッティ
出演:ロザンナ・スキャフィーノ、アレクサンドラ・スチュワルト、オーソン・ウェルズ、ウーゴ・トニャッツィ、ラウラ・ベッティ
パゾリーニは第2話「ラリコッタ」を監督。
「奇跡の丘」のような映画の撮影中、ずっと腹を空かしてようやく食事にありついた俳優が食べ過ぎて十字架の上で死んでしまうという掌編。
オーソン・ウェルズ扮する監督が手にしていたのは「マンマ・ローマ」の台本?インタビューに答えて「イタリア人は一番無知な国民だ。フェリーニはダンサーだ」と語らせていたのはパゾリーニ流のアイロニーか。
1963
〜1964
愛の集会 監督
出演:アルベルト・モラヴィア、チェザーレ・ムザッティ
1964 奇跡の丘 監督・脚本 ★★★
出演:エンリケ・イラゾクイ、マルゲリータ・カルーゾ、スザンナ・パゾリーニ、マルチェロ・モランテ、マリオ・ソクラテ
原作は「マタイによる福音書」。無神論者パゾリーニがいかにキリストの生涯を撮るか注目されたが、あくまでも忠実に、素朴に人間キリストを描写。出演はすべて素人で年老いた聖母マリアはパゾリーニの母スザンナが演じ味を出している。音楽は黒人霊歌や革命歌。監督が固有の宗教観を持っていないからか必要以上に脚色していないので、よけいに原始の迫力があった。
1966 大きな鳥と小さな鳥(未) 監督・脚本 ★★★★
出演:トト、ニネット・ダヴォリ、フェーミ・ベヌッシ、コザンナ・ディ・ロッコ
父親のトトと息子のニネットは街へ行くため郊外の道を歩いていた。途中、不思議なカラスが二人と合流する。おしゃべりで左翼のインテリであるカラスは、大昔、聖フランチェスコの使いとして鳥たちに神の福音を伝えた修道士チチッロの話を聞かせる。さらに歩き続ける二人は様々な出来事に遭遇。そのたびに説教をし続けるカラス。嫌気がさした二人は、とうとう彼を捕らえて…。
風刺と思想がおりこまれているが、
ユーモアあふれる詩的映像がすばらしい。喜劇俳優トトと天使の笑顔ニネットのコンビが最高。
1966 華やかな魔女たち 監督・脚本 ★★★★
監督:ルキノ・ヴィスコンティ、マウロ・ボロニーニ、フランコ・ロッシ、ヴィットリオ・デ・シーカ
出演:シルヴァーナ・マンガーノ、クリント・イーストウッド、アニー・ジラルド、アルベルト・ソルディ、ラウラ・ベッティ、マリル・トロ、ヘルムート・バーガー、トト、ニネット・ダヴォリ
5人の監督による5編のオムニバス。いずれも、シルヴァーナ・マンガーノが主演している。ちなみに彼女は製作者ディノ・デ・ラウレンティスの妻。
パゾリーニは
第3話「月から見た地球」を監督。「大きな鳥と小さな鳥」と同じトトとニネットのコンビ。「前作で重荷になっていたイデオロギー的な部分をそいでコミカルにメルヘンに仕上げた」とは監督の弁。個人的には一番後味の良かったパゾリーニ作品。
1967 殺して祈れ 出演
監督:リー・V・ビーヴァー
出演:ルー・カステル、マーク・ダモン
1967 アポロンの地獄 監督・脚本・出演 ★★★★★
出演:フランコ・チッティ、シルヴァーナ・マンガーノ、アリダ・ヴァリ、ラウラ・ベッティ、ニネット・ダヴォリ
ソフォクレスのギリシャ悲劇「オイディプス王」を映画化。コリントスの青年オイディプスは、「母と交わり父を殺すであろう」という神託を得る。予言を恐れた彼は、故郷を捨て、荒野をさまよううちライオス王と出会う。そのライオス王こそ、オイディプスの真の父親であった。母のイオカステと結ばれたオイディプスは真実を知って自らの両目をえぐる…。プロローグは現代(戦前)、中盤は古代、エピローグは現代(戦後)という不思議な構成。プロフィールにも記したとおり、パゾリーニの自伝的要素の濃い作品である。自らも大司祭の役で出演している。斬新なのは映像だけではない。ある種サイケデリックにも通ずる衣装、和のお囃子、雅楽といった音楽などに、既成概念にとらわれないパゾリーニの姿勢がみえる。
1968 テオレマ 監督・脚本 ★★★★★
出演:テレンス・スタンプ、シルヴァーナ・マンガーノ、アンヌ・ヴィアゼムスキー、ラウラ・ベッティ、マッシモ・ジロッティ、ニネット・ダヴォリ
1969 豚小屋 監督・脚本 ★★★★
出演:ピエール・クレマンティ、ジャン=ピエール・レオ、フランコ・チッティ、アンヌ・ヴィアゼムスキー、マルガリータ・ロサー、マルコ・フェレーリ
古代と現代が交錯して進行するといった構成の物語。いや寓話といったほうがいいだろう。古代編は荒涼とした土地をさまよう若者の人肉食がテーマとなっており、現代編は、西ドイツが舞台で一人のブルジョワ青年の秘められた性癖をテーマとしている。「カニバリズム」「獣姦」はショッキングな内容だが、パゾリーニ流の寓話として(この場合は「飢餓状態」か)とらえるべきだろう。どちらも悲惨な結末(高丘親王のような)が待っているが、全体的には淡々とした味わいだ。特に現代編の左右対称映像、青年やおじさんたちのコミカルな動きは理屈なしに楽しい。
1969 王女メディア 監督・脚本 ★★★★★
原作:エウリピデス
出演:マリア・カラス、ジュゼッペ・ジェンティーレ、マルガレート・クレマンティ、マッシモ・ジロッティ
1969 愛と怒り(未) 監督
監督:ベルナルド・ベルトルッチ、ジャン=リュック・ゴダール、カルロ・リッツァーニ
出演:ジュリアン・ベック、ジュリオ・チェザーレ・カステッロ、ミレーナ・ヴコティッチ
1970 デカメロン 監督・脚本 ★★★
原作:ジョヴァンニ・ボッカチオ
出演:フランコ・チッティ、ニネット・ダヴォリ、アンジェラ・ルーチェ、エリザベッタ・ダヴォリ、シルヴァーナ・マンガーノ
1971 カンタベリー物語 監督・脚本 ★★
出演:ニネット・ダヴォリ、マイケル・バルフォア、ヒュー・グリフィス、フランコ・チッティ
1973 エロスの詩 脚本
監督:セルジオ・チッティ
出演:ニネット・ダヴォリ、フランコ・ティッティ、ニコレッタ・マキャヴェリ
1974 アラビアン・ナイト 監督・脚本 ★★
出演:ニネット・ダヴォリ、フランコ・チッティ、フランコ・メルリ
1975 ソドムの市 監督・脚本 ★★★★★
原作:マルキ・ド・サド
出演:パオロ・ボナチェッリ、ジョルジオ・カタルディ、カテリナ・ボラット、アルド・ヴァレッティ、ウンベルト・P・クィナヴァル
ストーリーとレビューはこちら
1995 エロスを弾く女 原案
監督:アントニオ・ダゴスティーノ
出演:ザラ・ホワイツ、パスカル・ペルシアー

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REVIEW
私のソドム



PROFILE
1922年3月5日、北イタリアのボローニャ市に生まれた。父親が職業軍人だったため、幼時はその転勤とともに各地を転々とした。ボローニャ大学に学び、1941年頃より詩作をはじめる。1942年、北部の町カザルサヘ疎開のため移住、ここで本格的な文学活動に入った。そして1949年,母親とともにローマヘ出て、その後の幅広い活躍(詩人、作家、脚本家、映画監督、批評家、思想家、劇作家、画家)がはじまることになる。
都会の最下層労働者に深い共感をもち、その文学は、下層にあえぐ人間の貧困、孤独、傷ついた心情などを常にテーマとしてとりあげた。ローマでは、近郊の貧民窟に好んで出入りし、貧民たちの生活の中に自らを置いた。
そして、1955年に、この時代の体験に基づいた小説「生命の若者たち」を発表し、コロンビイ=クイドッティ賞を受賞。だが、これが発禁処分となるや、以後、戦闘的な姿勢が目立つ詩集、小説を次々に発表した。
その後は、もっぱら映画に没頭し、イタリア映画の『抗議者集団』のリーダーとして活躍。1954年、「河の女」の脚本に参加、その後「カビリアの夜」「狂った夜」「汚れなき抱擁」「残酷な夜」「飾り窓の女」などの脚本に携わった。
1961年、「アッカトーネ」(日本劇場未公開)を自ら演出、監督として名のりをあげた。すでに、この第一作から、その特異な才能は注目を浴びたが、続いて「マンマ・ローマ」「奇跡の丘」等を発表、既成の体制、宗教に痛烈な批判を投げかけ、かつ監督としての名声を世界的なものにした。
その後、「アポロンの地獄」「王女メディア」で神聖世界を独自の視点で描き、「テオレマ」「豚小屋」で、中産階級化した大衆の意識を攻撃し、艶笑三部作「デカメロン」「カンタベリー物語」「アラビアン・ナイト」では、庶民のエネルギーと反権力精神をユーモアたっぷりに表現した。そしてマルキ・ド・サド原作「ソドムの市」を撮った直後、17歳の少年に惨殺されてしまう。パゾリーニにはホモ・セクシュアルの性癖があったため、この死は物議を醸し出した。(当時の新聞記事は⇒こちら
遺作となった「ソドムの市」は強烈な描写を含む問題作として今日も語り継がれている。
賞歴 マンマ・ローマ ヴェネチア国際映画祭(イタリア・シネクラブ連盟賞)受賞
奇跡の丘 ヴェネチア国際映画祭(審査員特別賞)受賞
アポロンの地獄 ヴェネチア国際映画祭(映画による芸術・文学・科学の普及国際委員会賞)受賞
デカメロン ベルリン国際映画賞(銀熊賞)受賞
カンタベリー物語 ベルリン国際映画賞(金熊賞)受賞
アラビアン・ナイト カンヌ国際映画祭(審査員特別賞)
参考文献 ピエル・パオロ・パゾリーニ映画の劇場用パンフレット
「パゾリーニとの対話」(晶文社)
「世界の映像作家1」(キネマ旬報社)

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