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わたしの人魚姫

Fantasy ★★★★
Horror
Healing ★★★
Eroticism ★★


 Story(わたしのねぷちゅな)

 黒真珠を探す兄について南国の海にやってきたジョリーは、浜辺に倒れていた美しい少女を、最初、「人魚姫」だと思った。しかし彼女には2本の足があり、記憶を失っているようで、自分のことを「ネプチュナ」と繰り返すばかり。ジョリーはネプチュナの世話をするうちに惹かれていくが、彼女は兄テオ(既に美しい婚約者がいるのだが)に思いを寄せている様子。そんな折、ネプチュナによって黒真珠の場所が発見され、同時に、海底に大きな遺跡も発見される。ネプチュナを本気で好きになってしまったジョリーは、初めて星を見たような振る舞いの彼女を本当の人魚ではないかと思い始める・・・

 山岸凉子さんお得意の現実との境目がファジーな幻想譚。兄テオへ思いを寄せるネプチュナを愛してしまった弟ジョリーの恋心によって、二重に悲しいメルヘンに仕上がっている。



Key Word Origin
人魚姫 アンデルセン童話
ネプチュナ ギリシャ神話
 
 ハンス・クリスチャン・アンデルセンの有名な童話「人魚姫」は、人間の王子に恋をしてしまった人魚姫が、魔法使いに頼んで人間にしてもらうが、結ばれない運命と悲しい結末が待っている。よく知られている結末は、人魚姫が海の水の泡になってしまうというものだが、初版では空気の精霊になっている。

 人魚(マーメイド)は、腰から上は長い金髪の美しい乙女で、腰から下は魚の形をした尾を持っている。海原の岩に腰掛けて、櫛で髪を梳かし、魅惑的な甘い声で歌うさまは、セイレーンと重なるかもしれない。その歌を聴いた者は、海に飛びこんで彼女の方に泳いでいくが、大抵おぼれてしまう。彼女たちが現れるのは、嵐の前兆であり、彼女らの姿を見ると、船乗りたちは生命の危険を感じたらしい。人間に好意的な人魚もいるが、人を水に引きずり込もうと狙っている水の精であることも多い。

 「ネプチュナ」というのは「ネプチューン」の女性名詞。「ネプチューン」はギリシャ神話に登場する「海神ポセイドン」の英語読み。

 
「わたしの人魚姫」は、アンデルセン童話の要素が強いかもしれない。好きになってしまった男性に尽くし、テオの部屋の前でペーパーナイフを持って立っているネプチュナは、人魚に戻るために王子のあたたかい血を・・・という人魚姫に重なる。
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