MYTHOLOGY HIRUKO


「蛭子」扉絵の図は「日出処の天子」に関係があった…!?


ひでかずさんよりいただいた情報1
【今日(2001年9月21日)の『朝日新聞』朝刊の「青鉛筆」欄に「千と千尋の神隠し」に登場する面のモデルが春日大社宝物殿に展示されている面であると書いてありました】
ひでかずさんよりいただいた情報2
【『大辞林 第二版』の<ぞうめん>の項と『広辞苑 第五版』の<あまのおもて>の項には図が掲載されており、こちらの図は『蛭子』と同じものでした】


■ あの図は雅楽「蘇利古(そりこ)」「安摩(あま)」の舞に用いられる「雑面(ぞうめん)」である。

  「雑面」とは、厚紙と薄絹をはりあわせたものに、人面を象徴的に図案化した面。

蘇利古蘇利古    安摩安摩

「蛭子」扉絵の図は、どちらかといえば「安摩」に近いようだ。

■ 「蘇利古(そりこ)」「安摩(あま)」共に、聖徳太子が発願し建立された四天王寺(大阪市)で、毎年4月に行われる聖霊会(しょうりょうえ)において舞われる。
舞楽では、面をつけたときは必ず牟子(面帽子)を頭にかぶることになっているが、この雑面の場合は冠をつける。
聖霊会(しょうりょうえ)とは、六時堂に設けた台座(亀の池の愛称で知られる池の中に建てられた石舞台)に管長らが相対し読経、それにあわせるように楽を奏で、また舞い、春の一日を聖徳太子に捧げる大法要である。

この情報をいただいたときに、ふと梅原猛氏の「隠された十字架」を思い起こし再読してみたら、やはり記述があった。(何度も読み返したのに忘れていたのだった…)
「…四天王寺の聖霊会においては、迦陵頻伽と胡蝶の舞以前に、蘇利古という舞が舞われる。これも奇妙な舞である。紙の面をつけた五人の舞人が舞うのであるが、この面の形はまことに奇妙で、もとより人間の顔ではない。これはこの寺の名である四天王と太子と五人の亡霊ではないかと私は思うが、これもまた聖霊会独自の舞である…」
(梅原猛著「隠された十字架〜法隆寺論〜」新潮文庫・昭和57年第4刷P504より引用)
この梅原氏の「もとより人間の顔ではない」から「日出処の天子」(花とゆめコミックス第1巻P91)の有名な「人にあらず」シーンを連想したのは私だけであろうか…?
「蛭子」においても、キーワードはやはり「人にあらず」ではないか。得体のしれない怖さ、精神の奇形性を表現するのに、「雑面」を配するとはさすがの演出である。

謎を抱きつづけていた私に、情報を寄せてくださったひでかずさん。心より感謝申し上げます…!
最後に…。
謎だと思い続けていたのは私だけで、けっこう有名な面なのかもしれませんが、その方面には疎いもので…ご了承くださいませ。また記載ミスなどございましたら、お知らせくださると嬉しいです。
【参考文献】

「雅楽への招待」(小学館)東儀俊美
「隠された十字架〜法隆寺論〜」(新潮文庫)梅原猛
「広辞苑」

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