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by 「黒死館徘徊録」の素天堂さん
大昔のことから話します。
よく古本屋さんの均一本から昔の岩波文庫絶版本を探したものでした。
リラダンの「未来のイヴ」やメレジュコフスキーがレオナルド・ダ・ヴィンチの生涯を描いた「神々の復活」E.T.C.
そんな時、二〇世紀初頭の英国のエッセイスト ベネットの読書案内「文学趣味」を買いました。読むべき本のリスト中に「オトラント城奇譚」やコリンズの「白衣の女」、トマス・ブラウンの「医師の宗教」ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」ド・クインシー「阿片のみの告白」が上げられるというとんでもないものなのですが、その中にチャールズ・ラムの「エリア随筆」から全文引用されている「幻の子供」というエッセイがありました。その生涯を、精神病の発作で自分たちの母を殺してしまった、姉メアリの看病のために独身で終わった作者が晩年に書いた作品です。多分二人の共同で書かれた「シェークスピア物語」はきっとご存じでしょう。
エッセイはある夜の食後の団欒時、作者の話を聞こうと寄ってきた子供たちに昔語りをはじめるところから始まります。
作者は子供たちにその家族の事績を語って聞かせ、二人の子供(アリスとジョン)は話に熱中してさまざまな仕草を見せ、娘アリスは“亡くなった母アリスそっくりな”その顔を作者にじっと向けていました。しかし話が佳境にいるにつけ二人の子供たちの影は徐々に薄れてゆき、最後にかすかな表情のみで作者にこう語ります。
「私たちはアリスの子供でもあなたのこどもでもありません。私たちは影も形もない、夢の中の子供に過ぎないのです。」
そう言われて作者ははじめて自分がひとり用の肘掛け椅子で微睡んでいたことに気づくのです。振り向くとそこにはいつも忠実な姉の姿があるばかりだったのです。
そんな話を読んで「幻の子供たち」のアンソロジーを作りたいと思ったのはもう、ずっと昔でした。つくったリストもどこかへ行って、蔵書も散失してしまった今、少女コレクションとしては不十分かもしれませんがこんなリストをつくってみました。
作品名 (★の理由) | 少女の魅力 |
ダウンタウン物語 (おしゃまなみんなに) | ★★★★ |
タクシードライバー (アメリカの少女) | ★★ |
白い家の少女 (自分で生きようとする少女に) | ★★★★★ |
ミツバチのささやき (いるだけでいい) | ★★★★ |
ジェニーの肖像 (この女性は少女ではない) | ★★ |
ロリータ (監督の意図はわかるが) | ★★★ |
悪い種子 (いたずら嫌なこの子に) | ★★★★ |
噂の二人 (かわいそうなシャーリー・マクレーンに) | ★★★★ |
ペーパー・ムーン (可愛く煙草を吸える) | ★★★★★ |
プリティ・ベビー (きれいなだけでは魅力ではない) | ★★★ |
地下鉄のザジ (空きっ歯のこの子は) | ★★★★★ |
サスペリア (いじめられっこの魅力かな) | ★★★ |
ファントム・オブ・パラダイス (本当に面白かったのはスワン) | ★★★★ |
シベールの日曜日 (夢の中の少女) | ★★★★★ |
アリス (残念だけど理想のアリスではない) | ★★ |
ドリーム・チャイルド (残念だけど理想のアリスではない) | ★★ |
不思議の国のアリス《英国版》 (残念だけど理想のアリスではない) | ★★ |
ダウンタウン物語(1976) | |||
監督:アラン・パーカー | アラン・パーカーの監督ものではお洒落な異色作で偏屈館向き。タルーラも素晴らしいが、素天堂の好みは”ブラウジー役”のフロリー・ダガー。 とっちゃん坊やのポール・ウィリアムスの音楽がオールドファッションの雰囲気をよく出している。 ダンス・コレクションへ |
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音楽:ポール・ウィリアムス | |||
出演:スコット・バイオ、ジョディ・フォスター、フロリー・ダガー、ジョン・カッシージ、マーティン・レブ、ポール・マーフィ、ハンプティ・アルビン・ジェンキンス | |||
少女の魅力 | ★★★★ | ||
タクシードライバー(1976) | |||
監督:マーティン・スコセッシ | 13歳の娼婦 とにかく幼い頃の透き通った美しさは驚異的。 | ||
出演:ロバート・デ・ニーロ、シビル・シェパード、ピーター・ボイル、ジョディ・フォスター | |||
少女の魅力 | ★★ | ||
白い家の少女(1976) | |||
監督:ニコラス・ジェスネル | ジョディの意志の強い少女も勿論よかったが、マーティン・シーンの異常者が妙にはまり役。それにしても、あんな子がいたら大家のせがれじゃなくても干渉したくなるかな。演出上の意図でわざとかもしれませんが足の悪いボーフレンドとのシーンで見せる肢体の幼さと、リアルさは美しいとは言えませんでした。 コートを着てバスの中でエミリー・ディキンソンの詩集を読むあのあたりが最高。 |
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出演:ジョディ・フォスター、マーティン・シーン、アレクシス・スミス | |||
少女の魅力 | ★★★★★ | ||
ミツバチのささやき(1973) | |||
監督:ビクトル・エリセ | アナ・トレントがかわいい。怪物に花を差し出す少女はもちろん「フランケンシュタイン」へのオマージュ。 小屋に潜む怪物は三〇年代スペインの暗い政治状況を少女の視線を通して描いたもの、といっていいでしょうか? |
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出演:アナ・トレント、イサベル・テリェリア | |||
少女の魅力 | ★★★★ | ||
ジェニーの肖像(1947) | |||
監督:ウィリアム・ディーターレ | 石の森章太郎の初期の傑作にこの作品からインスパイアされた作品があった。 ストーリー的には最高の少女物語だが残念ながら主人公のジェニファー・ジョーンズが大人すぎて少女とは言いがたいのが難と言えば難。 かえって石の森の「きょうは帰ってこない、そしてあしたも(こんな題だっような気がします)」のほうがイメージ的にはよかった。 最初期の石の森の少女マンガは傑作が多かったと思います。 |
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原作:ロバート・ネイザン | |||
出演:ジェニファー・ジョーンズ、ジョセフ・コットン | |||
少女の魅力 | ★★ | ||
ロリータ(1961) | |||
監督:スタンリー・キューブリック | キューブリックはわざとダサめなアメリカの田舎娘のイメージを主人公役スー・ライアンに求めたのではないか。今ならそうだろうなとわかる。 「偏屈映画館」へ |
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出演:ジェイムス・メイスン、シェリー・ウィンタース、ピーター・セラーズ、スー・リオン | |||
少女の魅力 | ★★★ | ||
悪い種子(1953) | |||
監督:マービン・ルロイ | 「偏屈映画館」へ | ||
出演:パティー・マコーマック、ナンシー・ケリー | |||
少女の魅力 | ★★★★ | ||
噂の二人(1961) | |||
監督:ウィリアム・ワイラー | 思春期前の少女たちの持つ悪意とエゴの強烈さに辟易する作品群。 後者は、オードリー・ヘプバーンとシャーリー・マクレーンの異色の組合せ。 女生徒が漏らした悪意の噂が二人の女性教師の間に微妙な亀裂をもたらし、ついにその関係に破局が訪れる。 マクレーンでは唯一といってもよい最高に暗い役回りだった。原作は、ジェーン・フォンダ後期の佳作「ジュリア」のモデル、リリアン・ヘルマンの戯曲。 「ジュリア」の舞台になった当時、彼女はこの戯曲「子供の時間」を書いていたそうだ。 |
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原作:リリアン・ヘルマン | |||
出演:オードリー・ヘップバーン、シャーリー・マクレーン、ジェームズ・ガーナー | |||
少女の魅力 | ★★★★ | ||
ペーパー・ムーン(1973) | |||
監督:ピーター・ボグダノヴィッチ | 比較的ボグダノビッチ臭くない作品。後半、密造酒を巡ってのイザコザからの展開はスピーディでよろしい。 美少女ではないけれど、煙草を吹かしながらラジオを聴くテイタム・オニール。素天堂はこの映画で20年代ジャズのよさを知りました。 マデリン・カーンのちょっと下品な踊り子がいい。 余談ですがマデリン・カーンとしては「ヤング・フランケンシュタイン」での、あのアリアが絶品でしょう。 |
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出演:ライアン・オニール、テイタム・オニール、マデリーン・カーン | |||
少女の魅力 | ★★★★★ | ||
プリティ・ベビー(1978) | |||
監督:ルイ・マル | ニューオリンズの娼家街ストーリーヴィルに住み込み彼女たちの写真を撮り続けた男E.J.ベロックの話。それに絡む12歳の娼婦役がブルック・シールズ。 きれいだったなぁ。ルイ・マルにしてはシニックな物語。大人の恋を描くと妙にセンチメンタルでくどくなるのに。 「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」でもそうだったが旧仏領の南部の頽廃って好きだなあ。「風と共に去りぬ」は見てないけど… |
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出演:キース・キャラダイン、スーザン・サランドン、ブルック・シールズ | |||
少女の魅力 | ★★★ | ||
地下鉄のザジ(1960) | |||
監督:ルイ・マル | 原作がめちゃくちゃシュールでキュート。ルイ・マルはそれをほとんど原作通りに映画化している。 パリの街がすっかり主人公の少女の遊園地になっている、何度見ても楽しい映画です。主人公ザジ役はカトリーヌ・ドモンジョ。凄い名前だ。 おじさん役のフィリップ・ノワレがいい味を出している。 |
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原作:レイモン・クノー | |||
出演:カトリーヌ・ドモンジョ、フィリップ・ノワレ | |||
少女の魅力 | ★★★★★ | ||
サスペリア(1977) | |||
監督:ダリオ・アルジェント | ジェシカ・ハーパーかわいい。古典的な少女いじめが(ある意味)なかなか楽しかった。 アリダ・ヴァリ昔はきれいだったのに、すっかり怪奇ものの常連だなぁ。 |
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出演:ジェシカ・ハーパー、アリダ・ヴァリ、ジョーン・ベネット、ウド・キア | |||
少女の魅力 | ★★★ | ||
ファントム・オブ・パラダイス(1974) | |||
監督:ブライアン・デ・パルマ | 素天堂が唯一面白かったと言えるデ・パルマ。あ、そうか「キャリー」もそうだ。あれも少女コレクションに含めるべき作品ですねえ。そういえば・・・。 あ、これも、ジェシカ・ハーパーだった。いじめ役のスワン、ポール・ウィリアムズ気持ちよさそうでした。 |
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出演:ポール・ウィリアムス、ウィリアム・フィンレイ、ジェシカ・ハーパー | |||
少女の魅力 | ★★★★ | ||
シベールの日曜日(1962) | |||
監督:セルジュ・ブールギニョン | この作品に関しては言いたいことはまえにすべて書いてしまった。 ただこうやって並べてみると、どの少女にもキリッとしたある種の意志の強さが共通しているな。 素天堂の趣味なのでしょうか。 「偏屈映画館」へ |
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出演:ハーディー・クリューガー、パトリシア・ゴッツィ | |||
少女の魅力 | ★★★★★ | ||
Alice in Wonderland | |||
アリス(1988) | アリスもの3本、英国版はなぜかサントラのLPをもっているが、ビデオは吹き替え版。英国本土の威信をかけたオールスターキャスト。 眠りネズミをダドリー・ムーア、三月ウサギをピーター・セラーズe.t.c.なのにリアルなメイクで日本語版だから誰が誰なのか全然わからないと言う珍品(?)。 シュヴァンクマイエルの「アリス」は、その悪趣味にもかかわらず最初のキャロル自筆イラスト本「ALICE in UNDERGOUND」に一番近いイメージを持っているのではないだろうか。 「ドリーム・チャイルド」はアリス物語に隠されたある暗さを全面に押し出したドキュメンタリー風の異色作。 アリス原作の持つ暗さが「ディズニー版アリス」を失敗作としてしか評価させられない原因かもしれない。 |
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監督:ヤン・シュヴァンクマイエル | |||
出演:クリスティーナ・コホウトヴァー、人形たち | |||
少女の魅力 | ★ | ||
ドリームチャイルド(1985) | |||
監督:ギャビン・ミラー | |||
クリーチャー・デザイン:ジム・ヘンソン | |||
出演:コーラル・ブラウン、アメリア・シャンクリー、ジェーン・アッシャー | |||
少女の魅力 | ★★ | ||
不思議の国のアリス/英国版(1973) | |||
監督:ウィリアム・スターリング | |||
出演:フィオナ・フレートン(アリス) マイケル・クローフォード(白うさぎ) ダドリー・ムーア−(眠りネズミ) ロバート・ヘルプマン(いかれ帽子屋) ラルフ・リチャードソン(いも虫) フローラ・ロブソン(ハートの女王) ピーター・セラーズ(三月うさぎ) |
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少女の魅力 | ★★ |