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ミカウ  ミカウの推薦図書



by 国語教諭のミカウさん

LIST

作品No. 作品名 作家名
燠火 ピエール・ド・マンディアルグ
父の心配 フランツ・カフカ
スローターハウス5 カート・ヴォネガット・ジュニア
ゴキブリの海 トンマーゾ・ランドルフィ
フォーストロール博士言行録 アルフレッド・ジャリ




No.1  「燠火(おきび)」 ピエール・ド・マンディアルグ

(生田耕作 訳・白水社刊)

 フロリーヌは、《南米人》の催す舞踏会に招待された。薄暗い、円形の螺旋階段を上り、アパルトマンの最上階にたどり着くと、すさまじい喧噪の中、彼女は一人の《牝騾馬のよう》に野性的な女性と踊り始める。ダンスに陶酔しきったフロリーヌは、《南米人》に引き合わされぬまま、意識を失ってしまう。気がつくと、彼女は両手両足を縛られ、馬車の底に転がされていた。馬車はやがて郊外の林道で停まり、複数の男たちが無言のまま彼女の胸にナイフを突き立てる。

 …マンディアルグの美しい硬質な文体でつづられたこの短編は、様々なイメージを呼びさます。似たような夢を見たことがあるぼくは、ある種の懐かしさを覚えもした。カフカ的な雰囲気も漂うが、ユーモアが薄い分、切り立ったような印象が強い。
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No.2  「父の心配」 フランツ・カフカ


(本野亨一 訳・角川文庫「ある流刑地の話」)

 カフカの短編「父の心配」に、《オドラデック》と呼ばれるものが出てくる。
 《オドラデック》は、平べったくて、星形の糸巻きのようなかっこうをしている。《オドラデック》が何なのかは、よくわからない。が、とにかく自分の意志で動き回るし、簡単な言葉も話す。《わたし》は、自分の死後も《オドラデック》がそうして生き残ることを思うと、苦痛に近い感情におそわれる。


 …この掌編に、カフカの不安・変身・父との対峙・刑罰・永劫と忘却といったものをみることもできるのだろうが、ぼくにとってのカフカは、第一にユーモアだ。カフカのその他の作品にも、おいしいユーモアがてんこ盛りだ。

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No.3  「スローターハウス5」 カート・ヴォネガット・ジュニア


(伊藤典夫 訳・ハヤカワ文庫)

 主人公ビリー・ピルグリムは、時間旅行者である。自分の意志にかかわらず、過去から未来へと往来する。幸福な結婚生活〜UFOに捕まり、トラルファマドール星で同じ境遇の肉体派女優との動物園生活〜第二次大戦中のドレスデン空襲体験と、ビリーは既に知り尽くした自分の人生を際限なく生きる。

 …初めはテレビの深夜映画で観て強い印象を受けた。後で思えばとても映像的な作品だったのかもしれない。針飛びにも似た、無秩序で分裂症的な構成はしかし、どの場面も同等のリアリティを持って迫ってくる。半自伝的小説とあり、ドレスデンのくだりは、作者の実体験に基づき、登場人物には、既に発表された作品の登場人物が総出演する。読んでいて、自然に主人公の感覚が伝わってくる珍しい小説だ。

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No.4  「ゴキブリの海」 トンマーゾ・ランドルフィ

(竹山博英 訳・国書刊行会「現代イタリア幻想短編集」)
 初老の弁護士が歩いていると、床屋から息子が飛び出してきて、腕の傷を見せる。中からは紐やマカロニ、靴の鋲、散弾、米粒、蝿や蛆虫などが次々と。それらを持たされたまま弁護士は息子の後を着いて行く。そのまま帆船に乗り込み、船長や船員、拉致されてきた息子が想いを寄せる上院議員の娘ルクレツィア(四六時中乳房から乳を垂れ流している)と共に『ゴキブリの海』を目指して出港する。

 ・・・日本で現代イタリア文学が紹介される機会は、あまり多くないのではないか。まあごく一般的に言ってそんな気がする。そんなわけで、ランドルフィという作家についても全然知らなくて、「現代イタリア幻想短編集」の中の一篇として読んだのだが、この話はけっこうおもしろかった。もちろん、この手の幻想小説の文法に従って、「なぜそうなのか」という説明はない。

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No.5
  「フォーストロール博士言行録」アルフレッド・ジャリ

(相磯佳正 訳・国書刊行会)
 フォストロール博士は生まれた時から63歳で、家賃を踏み倒したために家財を差し押さえられ、長さ12mの船(パラフィン塗装を施されたベッド)でパリの街に出港する。供は『ア・ア』が口癖の犬面のオオザル、ボス・ド・ナージュ。

 奇人として知られるジャリ。結核性脳膜炎による死の前年に書かれた「超男性」もおもしろいが、本書はより変でぶっ飛んでいる。(何でも「超男性」の方は、大衆的で平易な文体を心がけて書かれたらしい)イメージを掘り下げた感じというよりはむしろ、コラージュのような断片の連続は前衛ジャズ?

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