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グール

Fantasy ★★
Horror ★★★★
Healing
Eroticism ★★★


 Story(ぐーる)

 船が難破して無人島に流された男が、同じように流されて島へたどりついたという女に出会う。男はのろしの用意をし、食料を調達しようと努力するが、女はなぜか無気力で何をやっても無駄と繰り返す。不思議なことに、この島では魚も鳥も捕らえることはできず、口に出来るものといえば果物か海草だけ。男は肉が欲しくてたまらなかった。ある夜、男は女が自分をのぞきこんでいるのに気づいた。その行為が毎夜繰り返されるので、男は女も望んでいるとばかり押し倒そうとするが、女は激しく拒む。しかし我慢しきれなくなった男が抱きつこうとすると、逆に男は腕を食いちぎられてしまう。肉をむさぼり食う女を、男は「化物」とののしるが、自分の食いちぎられた腕が元通りになっているのに気づいて・・・

 17ページの中に、死と欲望が生々しく描かれている。ラストのセリフも衝撃だが、やはり絵の美しさと怖さがこの作品の見どころであろう。男の腕を食いちぎる女の表情は、まさに屍鬼である。美しい女から欲望をあらわにした鬼の顔に豹変するさまは凄まじい。しかし、腕をむさぼり食う女には魔の美しさを感じてしまうのだ。



Key Word Origin
グール 古代アラビア
 
 古代アラビア語で、災難、恐怖をしめす言葉が語源とされている。グールは「アラビアン・ナイト」に、毛深く、肌の黒い人間のような姿で描かれている。女性名詞はグーラーで、こちらは美女の姿。好物は人間の肉で、言葉巧みに誘って頭からかじってしまうという。しかし、神には弱く、集団はおそわない。そのため、人里の近くには現れなくなり、食べるのも屍体だけになり、グール=屍鬼と呼ばれるようになった。

 最初に発表されたときは、「グール―屍鬼―」と、サブタイトルがついていたが、全集に収録されたときには「屍鬼」という言葉が消えていたので残念だ。表紙の美しさと不気味さも秀逸で、最初にカラーで見たときの衝撃は忘れられない。

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