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クローネンバーグのポートレイト デヴィッド・クローネンバーグ
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デヴィッド・クローネンバーグ
1943年カナダ生まれ
REVIEW  NOTE  PROFILE  DIRECTOR
 
★は個人的評価です

WORKS
1969 ステレオ/均衡の遺失 監督・脚本
出演:ロナルド・モロジック、ジャック・メッシンガー、K・マイヤー、イアン・イウィング
学生時代に製作した実験的要素の濃い作品。後に彼の作品で繰り返し描かれることになる「テクノロジーの犠牲者」というテーマが既に登場している。
1970 クライム・オブ・ザ・フューチャー/未来犯罪の確立 監督・脚本
出演:ロナルド・モロジック、ジョン・リドルト、タニア・ゾルティ、J・メシンガー
耳から流れ出る異物に魅かれるある一人の学者の姿を追ったナルシスティックな映像。幻想とサイエンスとエロスの要素が既にある。
1975 シーバース(未) 監督・脚本 ★★★★
出演:ポール・ハンプトン、ジョー・シルヴァー、リン・ローリイ、アレン・マジコフスキー、バーバラ・スティール、スーザン・ペトリ
邦題は「人喰い生物の島」。人間の内臓の代替として研究されていた寄生虫には、人の理性を失わせるというかくされた目的があった。寄生虫はエロティックな行為と共に人体を移りゆき、舞台となる閉塞的なマンションの住民は…。ホラーブームの最盛期に埋もれて当時はヒットしなかったが、「性と社会的無秩序を描き出した」と一部高い評価を受ける。冷たく白い建造物にクローネンバーグ特有の内臓感覚。
1977 ラビッド 監督・脚本 ★★★
出演:マリリン・チェンバース、フランク・ムーア、ジョー・シルヴァー、パトリシア・ゲイジ、スーザン・ロマン、ハワード・リシュパン、ジュリー・アナ
交通事故で人工皮膚の緊急手術を受けたローズの体に異変が起きる。腋の下に男根のような突起物ができ、それを使って人を襲うのだ。彼女に襲われた被害者は狂犬病のようになり、その症状は次々と伝染していく。Rabidは「狂犬病に罹った、凶暴な」の意。ヴァンパイア、ゾンビものといえるかもしれない。
1978 ファイアーボール(未) 監督・脚本
出演:ジョン・サクソン、ニコラス・キャンベル、ウィリアム・スミス、クローディア・ジェニングス、ドン・フランクス、セドリック・スミス
クローネンバーグのファンには評判がよくないカーアクション映画。レースの出場経験もある車好きの監督らしいこだわりが細部にあるらしい。
1979 ザ・ブルード/怒りのメタファー 監督・脚本 ★★★
出演:オリヴァー・リード、サマンサ・エッガー、アート・ヒンドル、シンディ・ハインズ、スーザン・ホーガン、ナーラ・フィッツジェラルド、ニコラス・キャンベル
人間の「憎悪」を、肉体的に具現化させる「サイコプラズミクス療法」を研究する精神科医。その実験台になったノラの体にはやがて腫瘍ができ、その中から奇怪な小人が現れる…。精神的外傷を可視化しようとするクローネンバーグの主張が最も顕著にあらわれた作品であるかもしれない。同時に、今日的なテーマである子供への虐待をホラーという形で描き切った作品としても評価できる。ノラ役はテレンス・スタンプに「コレクター」されたサマンサ・エッガー。
1981 スキャナーズ 監督・脚本 ★★★★
出演:スティーヴン・ラック、ジェニファー・オニール、マイケル・アイアンサイド、パトリック・マクグーハン、ローレンス・デイン、ロバート・シルヴァーマン、チャック・シャマタ、アダム・ルドウィッグ
スプラッタ・ムービー全盛の渦中で、この作品も「頭部破壊」シーンが前面に押し出されヒットした。スキャナー(超能力者)を利用するハイテク警備会社。そこの科学者によって、さらに能力を開発された主人公ベイルに与えられた任務は、恐るべき力で世界を支配しようとする裏のスキャナー、レボックをつぶすことだった。スキャナー同士による壮絶な超能力合戦、どろどろした人間関係、そして精巧で迫力あるSFXが大きな魅力になっている。
1982 ヴィデオドローム 監督・脚本 ★★★★★
出演:ジェームズ・ウッズ、デボラ・ハリー、ソーニャ・スミッツ、レイ・カールソン、ピーター・ドゥヴォルスキー
ケーブルTV局を経営するマックスは、奇妙なアングラ番組を偶然発見し、そのエロスとバイオレンスにあふれた映像の虜となっていく。やがて「ヴィデオドローム」に秘められた恐るべき陰謀が…。ビデオ映像が人間の体内に腫瘍をつくりだすというアイデアは荒唐無稽に思えるが、幻覚が人格を内側から切り崩していくといったプロセスがていねいに描かれており、映像のこちら側へも恐怖と恍惚が交錯して伝わってくる。ジェームズ・ウッズとデボラ・ハリーの個性も見逃せない。
1983 デッドゾーン 監督 ★★★
原作:スティーヴン・キング
出演:クリストファー・ウォーケン、ブルック・アダムス、マーティン・シーン、ニコラス・キャンベル、トム・スケリット、アンソニー・ザーブ、ハーバート・ロム、コリーン・デューハースト、ラモン・エステヴェス
交通事故で5年の昏睡状態から覚めた時、手に触れるだけで相手の未来を予知してしまう力を身につけていたジョニ―。ある議員がやがて世界を破滅に導くと知った時、ジョニーは自分の使命を感じとる…。はじめての原作(スティーヴン・キング)ものだからか、ジョニーを演じるクリストファー・ウォーケンの個性が突出していたためか、クローネンバーグ色が薄いような気がする。運命に取り込まれて行く男の悲哀が透明な世界を創りあげていて、これはこれで傑作だと思うが…少し寂しい。
1986 ザ・フライ 監督・脚本・出演 ★★★★
原作:ジョルジュ・ランジュラン
出演:ジェフ・ゴールドブラム、ジーナ・デイヴィス、ジョン・ゲッツ、ジョイ・ブーシェル、レス・カールソン、ジョージ・チュヴァロ、マイケル・コープマン
物質転送の実験に取り組む天才科学者セス。その装置テレポッドに一匹の蝿が紛れ込んだために悲劇は起こった。50年代SF映画「蝿男の恐怖」(1958年カート・ニューマン監督)のリメイク。SFXもすばらしいが、蝿男に変貌して行くセスの苦悩、そしてセスを愛してしまった女性記者ベロニカの苦悩、恋人たちの哀しみの描写が、この作品の魅力であるといってもよい。
もちろん、クローネンバーグならではのディテール描写のリアルさも秀逸で、昆虫の特性が細かくエピソードとしてあげられている。変貌していく過程において、セスとベロニカは結ばれるのだが、彼女が身ごもった子供は、どちらのDNAを受け継いでいるのだろうか。そのあたりの葛藤もみどころだ。クローネンバーグ出演はベロニカの悪夢の出産シーン。寒々とした白衣に巨大な蛆がよく似合う。
1988 戦慄の絆 監督・脚本・製作 ★★★★★
原作:バリ・ウッド、ジャック・ギースランド
出演:ジェレミー・アイアンズ、ジュヌヴィエーヴ・ビジョルド、ハイジ・フォン・パレスケ、バーバラ・ゴードン、シャーリー・ダグラス、スティーヴン・ラック、ジリアン・ヘネシー
高名な産婦人科医兄弟(一卵性双生児)の腐乱死体が裸に近い状態で発見された実話をもとに書かれた「双生児」(バリ・ウッド、ジャック・ギースランド)を原作としている。幼い頃から一心同体に育った産婦人科医兄弟は、一人の女性に出会ったことから、それまでのアイデンティティの均衡を崩してゆく…。薬物中毒、三角関係、近親相姦、同性愛的な感情のもつれから起こる悲劇を主軸に描かれているのでクローネンバーグファンでなくともサイコ・スリラーの逸品として楽しめる。しかし一番印象に残ったのは、クローネンバーグがデザインしたという突然変異患者用の特注の手術器具。この冷たいグロテスクな器具で生温かい人体を切り刻むときに生じる感覚は、戦慄というより快楽に近い。それほどまでにエロティックな手術器具。これだけでも観る価値はある。また一人二役を微妙に演じ分けたジェレミー・アイアンズもいい。
1990 ミディアン(クライヴ・バーカー監督) 出演 ★★
監督:クライヴ・バーカー
原作:クライヴ・バーカー
出演:クレイグ・シェイファー、アン・ボビー、チャールズ・ヘイド、ヒュー・クァーシー、ヒュー・ロス、ダグ・ブラッドレイ、ジョン・エイガー
いわゆる妖怪や悪魔の正体である夜族(ナイトブリード)は人類の繁栄の影でひっそりと暮らしていたが、一人の猟奇殺人者の陰謀により、人間たちと戦わなければならなくなる。夜族よりも人間のほうが非道であるというあたりは永井豪の「デビルマン」を連想した。ストーリーは取り立てて語るほどではないが、この映画の魅力は何といっても猟奇殺人者を演じるクローネンバーグだろう。紳士然とした精神科医は猟奇殺人を犯すときもきちんとした身なりをしている。冷静沈着でささやくような優しい声。メガネの奥の冷たい目が怖すぎる。彼でなければ出せない異様な雰囲気。「フライ」の産婦人科医に引き続き俳優クローネンバーグ大活躍である。
1991 裸のランチ 監督・脚本 ★★★★★
原作:ウィリアム・バロウズ
出演:ピーター・ウェラー、ジュディ・デイヴィス、イアン・ホルム、ジュリアン・サンズ、ロイ・シャイダー、モニーク・メルキューレ、ニコラス・キャンベル、マイケル・ゼルニカー、ジョセフ・スコーシアニー
幻覚のようなウィリアム・バロウズの小説を映画化。小説家志望のウィリアム・リーは、しがないセールスマン。タイプライターに向かっている分、本業がおろそかになっている。妻は麻薬に手をだし、廃人の一歩手前。そんな中、かつては中毒者だった彼自身、自分の売る怪しげな殺虫剤を試して、恐ろしい幻覚とあふれる想像力を得るようになる…。幻想と現実が溶け合うインターゾーン。あらかじめ失われるとわかっている夢。ゴキブリ型タイプライター。マグワンプ工場。これは「裸のランチ」の忠実な映画化ではないし、バロウズの様々なエピソードが出てくるが小説家の伝記映画でもない。クローネンバーグによるバロウズ世界の解釈なのだろう。
1991 スキャナーズ3 原案
1993 スキャナーズ ニュー・エッジ/ザカリアス(未) 原案
1993 Mバタフライ 監督 ★★
出演:ジェレミー・アイアンズ、ジョン・ローン、バルバラ・スコヴァイアン・リチャードソン、アナベル・レヴェントン、シズコ・ホシイ
北京、文化大革命の前夜。フランス外交官のガリマールは、ふとしたことから京劇の舞台女優ソン・リリンと出会い、恋に落ちる。献身的な彼女にガリマールは溺れてゆくのだが、しかし彼女には秘密があった…。実話を元に、「マダム・バタフライ」をバックに繰り広げられる美しく残酷な人間ドラマ。クローネンバーグ色が感じられないが、ドラマとしてはおもしろく観ることができる。ジョン・ローンの女装も楽しいし。
1994 スキャナーズ5/ザカリアス・リターンズ(未) 原案
1995 ダーク・ハイウェイ(未) 出演
1996 クラッシュ 監督・脚本・製作 ★★★★
原作:J・G・バラード
出演:ジェームズ・スペイダー、ホリー・ハンター、イライアス・コティーズ、デボラ・アンガー、ロザンナ・アークエット、ピーター・マクニール
CMプロデューサーのジェームス・バラードは、空港へ向かう途中ハイウェイ上で正面衝突事故を起こす。相手のドライバーは死亡。助手席に乗っていた女性ヘレンはジェームスと共に病院に担ぎ込まれる。やがて回復した2人だったが、彼らは事故の衝撃を通してある種の性的興奮を感じていた。事故の体験により新しいエクスタシーを開拓した人々の存在を知った彼らは、次第にクラッシュの世界にのめり込んでゆく…。クラッシュ中毒の人間たちの行動は興味深いが、クラッシュシーンでは痛々しさのみでエクスタシーが伝わってこなかったのが残念だ。ジェームズ・スペイダーには個人的に色気を感じるし、ロザンナ・アークエットの太腿の傷はとてもエロティックだった。
1998 TABOO タブー(未) 製作総指揮
1999 イグジステンズ 監督・脚本・製作 ★★★
出演:ジュード・ロウ、ジェニファー・ジェイソン・リー、イアン・ホルム、ウィレム・デフォー、クリストファー・エクルストン、サラ・ポーリー、ドン・マッケラー、カラム・キース・レニー
脊髄に穴をあけ、そこにケーブルを接続して楽しむバーチャルリアリティゲーム。その最新ゲームをめぐり、天才ゲームデザイナーと反ゲーム主義者たちとの闘いが繰り広げられる。クローネンバーグならではの奇妙な小道具の数々が秀逸。アイデアはおもしろいが、バーチャルリアリティはSFでなくなってきているので、「ヴィデオドローム」を観たときのような興奮と衝撃はなかった。途中で先が読めてしまったし。しかし、クローネンバーグはキャスティングが巧い。ジュード・ロウ、ジェームズ・スペイダー、ジェレミー・アイアンズ、クリストファー・ウォーケン、ジェームズ・ウッズ…個人的に好みの役者ばかりであるし、このキャスティングからホモセクシュアルへの憧憬を感じるのは気のせいだろうか。(本人いわく「ゲイではない」らしいが…)
1999 レザクション 出演
2000 アメリカン・ナイトメア 出演

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WORKS(TV&MORE)


1971 Tourettes TV
1971 Letter from Michelangelo TV
1971 Jim Ritchie Sculptor TV
1972 Winter Garden TV
1972 Scarborough Bluffs TV
1972 Lakeshore TV
1972 In the Dirt TV
1972 Fort York TV
1972 Don Valley TV
1972 Programme X TVシリーズ
Secret Weapon
薬品会社や科学者が登場するクローネンバーグらしいドラマ
1976 Peep Show TVシリーズ
The Victim VTR
ストーカーと異常性癖という今日的な題材のドラマ。
The Lie Chair VTR(クローネンバーグ初期傑作選では「椅子」という邦題)
奇妙な住人が棲む奇妙な館に迷い込んだ一組の夫婦…。
オーソドックスな怪奇物語ではあるが、人物描写が細かく、知らず知らず観るものを歪んだ世界に引き込んでしまう魅力がある。
1976 Teleplay TVシリーズ
The Italian Machine(クローネンバーグ初期傑作選では「機械」という邦題)
クローネンバーグのバイクマニアっぷりが発揮された不思議なドラマ。
クラシック・バイクに心血を注ぐ男たち。彼らはスピードと機械の持つ冷徹な感触を楽しんでいたが…。
1991 Friday the 13th TVシリーズ
1991 Scales of Justice TVシリーズ




PROFILE
1943年3月15日、カナダのトロントで生まれる。父はクライム・ストーリー専門の記者兼エディター、母はバレエ団や聖歌隊のピアニストであった。
10歳のとき最初の小説を書く。トロント大学で生化学などを専攻するが理学部の学生とうまくコミュニケートできず、英語・英文学に転部。短編小説で賞を受けるなど文才を発揮した。お気に入りの作家は、ウィリアム・バロウズ、ウラジミール・ナボコフ、ヘンリー・ミラーなど。「小説を書いても、彼らの模倣の域を脱し得ない。同じ土俵で、これらのマスターを乗り越えるのは無理」として、作家を断念。
友人が映画に出演したことも手伝って映画に可能性を見出す。16mmの短編を2本(「Transfer」「From the Drain」)を監督。その後16mmから35mmに乗り換え、「ステレオ――均衡の消失」「クライム・オブ・フューチャー/未来犯罪の確立」を撮る。1975年に「デビッド・クローネンバーグのシーバース」で長編監督デビューを果たした。以後、「ラビッド」、「ザ・ブルード/怒りのメタファー」と作品を発表。「ザ・ブルード/怒りのメタファー」執筆中、離婚した前妻と娘の親権をめぐって対立、作品に影響が色濃く出ている。
そして1980年「スキャナーズ」でポピュラーな名声を得る。「ヴィデオドローム」は興行的にはのびなかったが、「80年代の『時計じかけのオレンジ』だ」というアンディ・ウォーホール評も手伝ってか、ビデオがカルト的な人気を博した。「デッド・ゾーン」で初めて原作(スティーヴン・キング)を映画化。ホラーの域にとどまらないファン層を確立。その後次々と異色作を送り出して現在にいたる。
また「ミディアン」など、個性的な雰囲気、風貌を生かした出演作もある。99年にはカンヌ映画祭審査委員長を務めた。「裸のランチ」以降の作品で助監督を務める娘のカサンドラがいる。
賞歴 戦慄の絆 LA批評家協会賞(監督賞)受賞
裸のランチ LA批評家協会賞(脚本賞)受賞
イグジステンズ ベルリン国際映画祭(芸術貢献賞)受賞
クラッシュ カンヌ国際映画祭(特別賞)受賞
参考文献 デヴィッド・クローネンバーグ各映画の劇場用パンフレット
「銀星倶楽部クローネンバーグ」(ペヨトル工房)
「クローネンバーグ・オン・クローネンバーグ」

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