CINEMA



マイ・ビューティフル・ランドレット

対談 いちげさん×葉月
 MY BEAUTIFUL LAUNDRETTE(1985)


上映時間: 98 分
製作国 :英
初公開年月 :1987年3月

監督: スティーヴン・フリアーズ
出演: ダニエル・デイ・ルイス  
    ゴードン・ウォーネック
    イード・ジャフリー  
    シャーリー・アン・フィールド  
    ロシャン・セス
 
アカデミー賞脚本賞:ノミネート
NY批評家協会賞 助演男優賞:授賞  ダニエル・デイ・ルイス
NY批評家協会賞 脚本賞:授賞  ハニフ・クレイシ




いちげさん
⇒この間、ビデオで見た「マイ・ビューティフル・ランドレッド」(1985)には久しぶりに胸の昂りを経験しました!
 1985年というクレジットを見ると、私自身もまだUKロックを聴いてた時代で結構イギリスに関心を抱いてた頃でもありました。で、この映画ってなんだかあの時代の空気のようなものを思い出させてくれる作品だったのです。

葉月
⇒監督はスティーヴン・フリアーズ。この作品は最初TV映画として製作されたらしいけどクチコミで人気が出たらしいです。「アナザ・カントリー」「モーリス」のような、いわゆる女の子好みの映画とは違った味があって、かくれた名作だと思います。同監督の「プリック・アップ」(1987)も法律で同性愛が禁じられていた60年代を背景に男同士の愛を描いた作品。私は「マイ・ビューティフル〜」のほうが好きだけど。

いちげさん
⇒この作品は、パキスタンからの出稼ぎ移民二世の青年が、幼馴染みの英国青年と協力して3Kのランドリーショップをリッツ並みの(笑)お店にするというお話。なんの先入観も持たずに見ていたため、これは移民の青年の成功物語か?と思って見ていたんですが。

葉月
⇒「性と人種を越えたイイ映画」だったでしょ?

いちげさん
⇒いやージョニー(ダニエル・デイ・ルイス)とオマール(ゴードン・ウォーネック)の抱擁シーンにはたまげました〜(よかったけど(笑))。
 「ファシスト」とオマールの父親に呼ばれて苦笑するジョニー。友人に「自分の国を裏切るのか?」と問いつめられるジョニー。そしてオマールとの間にさえ大きな溝が存在しているあたり、とても考えさせられます。再会した時にやすやすと二人が越えたこの溝、葉月さん言われるところの「性と人種の溝」を越えて、お互いひかれあう。人を好きになるということは、そういうことだと思います。
 カラチに行ったこともないオマールは英国人に同化していくような、曖昧な存在として周囲の人から見られるのかもしれないですね。でも彼は英国生まれの英国育ちのパキスタン人であり、それ以外の何者でもないわけです。ジョニーの友達は移民排斥を叫ぶ(かつてはジョニー自身も)けれど、オマールには「帰るべき母国」はない。強いて言えば英国こそが母国なんじゃないか?弱いものが更に弱いものを叩く、そういう社会の悪循環が不況と鬱積した民意を反映してた時代と言えますよね。「俺たちはこの国に勝てない」というオマールの父親の言葉は印象的でした。

葉月
⇒うんうん。マイノリティの立場でしかわかりえない痛切な叫びに思えました。階級制度から差別問題があとをたたない英国で、この登場人物の位置づけが個々の感情を際立たせていたような気がします。
 それからマイノリティの立場でしかわかりえないと言ったけど、差別の構造って実際はもっと複雑で悪循環になってるのかもしれませんね。アリス・ウォーカーの「カラー・パープル」とか読んでても。でも「マイ・ビューティフル〜」は最後のあたりではそういう問題があまり感じられなくなった。

いちげさん
⇒ジョニーは、かつての友人たちと戦わざるをえないはめになる。それはもう「国や人種」の戦いではなくて「愛」の戦いなんだと思います。ジョニーは迷いながら弱音を吐きながら、それでもたぶんオマールを愛していくんだろうと思わせるところで映画は終わりました。それが私にはとってもとっても嬉しかったのでした〜。
 ところで、ふたりはいつから溝を越える関係だったんだろう?小さな頃からそうだったのかもと思ったんですが、再会してからかな〜と最近では思っています。

葉月
⇒私は再会してからなんじゃないかな〜と思います。ほら、何とも思ってなかった幼なじみ同士が何かのきっかけで結ばれるってのは、昔の少女マンガにもありましたし(笑)
 とにかく、再会のときにふたりの感情の高ぶりがものすご〜く感じられました。オマールとの絡み、よかったですよね〜。ジョニーにはものすごく色気を感じます!感情と肉体でもって静かに迫ってくるような。やっぱダニエル・デイ・ルイス巧いんでしょうね。

 

by  いちげ & 葉月

ダニエル・デイ・ルイス

(ダニエル・デイ・ルイス)俳優

生年:1957年4月29日
出身地:イギリス/ロンドン

日曜日は別れの時 (1971)  
あの頃に帰りたい <TVM>(1982)  
ガンジー (1982)  
バウンティ/愛と反乱の航海 (1984)  
マイ・ビューティフル・ランドレット (1985)
眺めのいい部屋 (1986)  
風の中の恋人たち (1987)  
イングリッシュマンinニューヨーク <未>(1988)  
存在の耐えられない軽さ (1988)  
エバースマイル、ニュージャージー (1989)  
マイ・レフトフット (1989)  
ラスト・オブ・モヒカン (1992)  
エイジ・オブ・イノセンス/汚れなき情事 (1993)
父の祈りを (1993)  
クルーシブル (1996)  
ボクサー (1997)

スティーヴン・フリアーズ

(スティーヴン・フリアーズ)映画監督

黄昏に咲いて <TVM>(1984) 監督
殺し屋たちの挽歌 <未>(1984) 監督
マイ・ビューティフル・ランドレット (1985) 監督
サミー&ロージィ/それぞれの不倫 (1987) 監督
プリック・アップ (1987) 監督
危険な関係 (1988) 監督
グリフターズ/詐欺師たち (1990) 監督
靴をなくした天使 (1992) 監督
スナッパー (1993) 監督
ジキル&ハイド (1996) 監督
ハイロー・カントリー (1998) 監督




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