by「ズキズキどんぶり」の第一寿はるかさん
水木作品の場合、「恐怖」というより「怪奇」の称号がふさわしいように思う
「ゾッとする感覚」と「ユーモラス」を重視して、怪奇短編作品を10本集めてみた
順位 | 作品名 | 発表年と収録本 | コメント |
― | 「吸血鬼」 | 1967年 (サンコミックス「一陣の風」)他 |
主人公の赤ん坊吸血鬼がとにかく可愛い。闇に生きる者達への作者の愛情と敬意を感じる一編。 |
― | 「猫又」 | 1966年 (サンコミックス「猫又」)他 |
紙芝居的な単純なコマ割りと黒っぽい画面が、独特の恐怖のリズムを持って迫ってくる作品。人間の肉体を乗っ取る化け猫が恐ろしさの中にも奇妙な可愛さを持っているのも水木漫画らしい。 |
― | 「ゲゲゲの鬼太郎/幽霊電車」 | 1966年 (KCマガジン「ゲゲゲの鬼太郎」)他 |
「お化けなんかいない」と豪語する人間達が鬼太郎の秘術によって死の世界に引きずりこまれる。異世界の影を引きずってる鬼太郎がクールで怖くてセクシィなのです。 |
― | 「墓場の鬼太郎/怪奇一番勝負」 | 1962年 (角川書店「墓場の鬼太郎4巻」)他 |
貸本時代の鬼太郎漫画。鬼太郎は現在のような妖怪世界と人間世界の調停者ではなく、『あちらの世界の住人』として描かれており、境界を侵す人間は容赦なく殺してしまう。「一寸先は闇」感が充満した作品。何より鬼太郎の顔がコワい。 |
― | 「二世の縁/新・春雨物語」 | 1973年 (サンコミックス「目ひとつの神」)他 |
百年以上土の中で修行していた尊ぶべき尊者の正体は。しっとりと重みのある背景とユーモラスなキャラクターのアンバランスさ、全編に漂う『死への憧れ』がなんとも。 |
― | 「丸い輪の世界」 | 1966年 (サンコミックス「死者の招き」)他 |
時おり空中にぽっかりと出現する『丸い輪の世界』に入りこんだ少年はそこで死んだはずの妹と遊ぶ。幼い妹が異世界にひとりぼっちで住む痛ましさが淡々と描写されていて少年時代の寂寥感とともに胸をしめつける。 |
― | 「仙人酒」 | 1967年 (ちくま文庫「ねずみ男の冒険」)他 |
水木先生が短編作品において最も得意とする『夢見るダメ人間』ものの代表作のひとつ。悲惨も幸福も紙一重、という感じの曖昧な読後感が心地よいです。 |
― | 「暑い日」 | 1966年 (角川ホラー文庫「異悦録 水木しげるの世界」)他 |
蒸し暑い夏の夜の空気感とキャラの表情だけで怪奇世界を作り上げている傑作。石屋の親父の顔が怖すぎ。 |
― | 「未来をのぞく男」 | 1966年 (サンコミックス「猫又」)他 |
ダメ人間を描かせたら水木先生の右に出るものなし。ダメ男を演じさせたらメガネデッパ桜井君の右に出るキャラなし。『人生は無意味である』と言い切り、徹頭徹尾救いがないとこが真にクール。 |
― | 「糞神島」 | 1971年 (サンコミックス「一番病」)他 |
ウンコを神とあがめる糞だらけの島に転任した教師が『便所のあるキレイな世界』を目指した結果、糞の復讐を受け糞に埋もれて死ぬ話。昔からの風習を野蛮と決めつけ、排除しようとする近代合理主義を批判する風刺作。しかしハッキリ言ってこーゆう漫画を平然と描く水木先生が一番怖いです。 |
(2000.10.25.)
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