COMIC LIST

坂田靖子の怖いマンガ

by「居酒屋はねうさぎ」の天野章生さん
順位 作品名 発表年と収録本 コメント
「長者の娘一・二」 1996年
(潮コミックス「伊平次とわらわ」2)他
貧苦の中で人間であることをやめていくモノ達。人と化け物のスキマとは人の心の中のぽっかり開いた闇なのかもしれない。立ち向かう伊平次のセリフが胸を打つ。
「オーガスティンの庭」 1979年
(花とゆめコミックス「D班レポート3」)
母親の言いなりになる夫と、義理の娘である謎めいた少女オーガスティン。庭に隠された秘密とは・・!?サスペンス映画を見るような佳品。
「くされ縁」 1983年
(ジュネ・コミックス「くされ縁」)他
・・我々は皆、善人面してどれだけの罪を犯しているのだろう。
「吸血鬼幻想」 1982年
(ジュネ・コミックス「くされ縁」)他
この作品を”吸血鬼の食糧事情について”と書く坂田さんのセンスが大好き。吸血鬼伝説に伴うエロティシズムを淡々と描かれた佳品。
「幽霊」 1985年
(白泉社「月と博士」)他
坂田作品はあっちとこっちの境界が曖昧で、怖い、というのとはまた別なのだが。
「媚薬蜘蛛」 1987年
(ジュネ・コミックス「半熟少年」)
”媚薬の蜘蛛”なんである。これに刺されたらぶるぶるっとキてしまうんである。で、この後の展開が怖い。
「失われた都」 1988年
(小学館PFコミックス「マーガレットとご主人の底抜け珍道中」)
ブルターニュ地方に伝わるイスの都の伝説。背徳に耽る王女は悪魔につけ込まれ、都を滅ぼし未だに呪いの中で彷徨っているのか。美しくも呪われたファムファタールの伝説も、坂田さんにかかればどこかほっとする暖かさの中で終わる。
「明日」 1994年
(双葉社「怪奇体験談」)
一見どこにでもあるような仲の良い家族。楽しい周囲との交際の裏でじわじわと限界に近づいていく心理。本当に怖いのはこうした平凡さの中の異常かもしれない。
「パエトーン」
「プロメテウス」
(新書館「パエトーン」) 自分の才能の限界を感じた人間が陥った生と死の狭間。もがけばもがくほど泥沼に足を取られる、この苦しさ。嫉妬と羨望から無縁の人間などいないことを思い、葛藤の中でそれでも再度向き合うラストにじーんとする。(あ、怖いから離れてしまった・・)
10 「孔雀の庭」 (新書館「パエトーン」) 血溜まりを歩いてきた孔雀、赤子殺しの木の枝、煌めく夢のような空中庭園・・・。美しい悪夢のような展開も、最後のセリフでやはりほっと救われるのが坂田世界ならでは、なのだ。
(2000.10.5.)

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