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Paul McCartney 2002.11.8. 大阪ドーム

すばらしかった!まだ「Sgt.Pepper's Lonely Hearts Club Band〜The End」が頭の中で鳴り響いている。ジョンのファン歴30年の私だが、ポールの存在はいつも傍らにあり、コンサート中はいろいろな思いが交錯し、グッとこみあげてくること数回。純粋にライヴ、楽曲のすばらしさも楽しめたが、ビートルズへの思い入れはやはり格別であった。

私は妹、夫と同年代グループで行ったが、客層はほんとバラエティにとんでいた。リアルタイム世代であろう50代の夫婦、4、50代のおばちゃんグループ(昔、黄色い声をあげていたんだろうか)、20代の子供たちとその父親…というのが目についた。家族連れもたくさんいた。最後のリアルタイム世代である私ら40前後世代、その子供は小学生くらいだろう。もちろん若い世代の姿も。
今まで数多くのコンサートに行ったが、こんなに老若男女入りまじった客層は初めてで不思議な感じがした。

6時過ぎに開演、まずはワケのわからんプレショー。ポールが夢でみた風景をショーにしたそうだ。東西混交の見世物めいた、ちょっとフェリーニ映画の世界の雰囲気。

そして10分後、突然スクリーンにヘフナーのバイオリンベースのシルエットが映し出された!11日発売のUSAライブを速攻で買って聴いていたので、大体のセットリストは頭に入ってる。でも順番がわからないのも逆にヨカッタかな。
ポールは赤いTシャツに紫色のジャケット(ビートルズ時代の詰襟ジャケットのようなデザイン)で登場。昔からファッションセンスが悪かったけど、そういうところもあまり変わってなくて安心(?)。途中からは赤いTシャツ姿。還暦の赤だろうか。しかしスクリーンに映し出された人なつこい、少し上目づかいの表情は60年代のままだ。

オープニングは、「Hello Goodbye 」。何だか高音がちょっと苦しそう。京都でカゼをひいたというウワサが気になる。2曲目はウィングス時代の大ヒット「Jet」。声もよく出てきてカッコいい!調子出てきたかな?3曲目の「All My Loving 」は中学時代によく口ずさんでいた思い出の曲。ナマで聴いたら絶対に泣く!とライブ盤を聴いていたときは心に決めていたが(?)、一緒に歌うのが楽しくて泣く間もなかった。ホントほとんどの曲を今でも一緒に歌えてしまう。英語はビートルズでおぼえたんだから当然か。

ここで、ポールのあいさつ。東京公演では日本語がバンバン出てきたと聞いていたので「オッス」というかと思うと、「まいど!」「おおきに」「もうかりまっか?」の関西弁連発。会場から「ぼちぼちでんな〜」と返す声も。思っていたより日本語がたくさん出てきた。
今回のツアーではコンサート史上初めての同時通訳字幕が採用されていた。後ろで8人のスタッフががんばっているわりには、打ち出されるのがけっこう遅い。英語が苦手というファンには良いコミュニケーションになったと思うが。

4曲目は「Getting Better 」。名盤「Sgt.Pepper's Lonely Hearts Club Band」からの曲がけっこう多い。意外にもライブ向きの曲。続いて「Coming Up」。ディスコが流行ったときに如才ないポールが作った曲。「Let Me Roll It 」はウィングス時代では大好きな曲なのですごく嬉しかった。続いてニューアルバムから「Lonely Road 」「Driving Rain 」そして「Your Loving Flame 」は新妻ヘザーのために作ったと日本語で紹介。

ここからアコースティックギターに持ちかえて…「あなたと僕だけの時間です」
「Black Bird 」は人権問題などの運動がさかんだった60年代に作られた曲。「ジンケンモンダイ」と日本語で紹介してくれた。今さらながら歌がウマイ!アコースティックだとよけいに思う。
「Every Night 」「We Can Work It Out」、そしてサイケデリックなキーボードが運ばれて「You Never Give Me Your Money〜Carry That Weight 」。アビ―ロードで一番好きな部分だ。このメドレーに感動!「Fool On The Hill 」では「マジカル・ミステリー・ツアー」のTV映画の映像がスクリーンに映し出された。このTV映画は当時の英国メディアから散々たたかれていたっけ。今見てもサイケで新鮮な映像だ。

「Here Today」は「ジョンとの対話」と日本語で紹介。「ジョンのために拍手を…」と言うと、会場はわれんばかりの拍手。一種異様な興奮状態。実はこの曲、ライブ盤を聴くまで存在を知らなかった。ジョージや他のミュージシャンたちはすぐにジョンへの追悼曲をつくっていたが、ポールはずいぶんと時間をおいたようだ。それだけ確執が大きかったのだろう。

次もメンバーへの追悼で、ジョージの「Something」を彼が喜ぶようにと、ジョージにもらったウクレレで軽快に弾き語り。スクリーンには在りし日のジョージの姿が次々と映し出され…隣では妹がすすり泣きを始めた。軽快なリズムなので余計に押しつけがましい雰囲気がなかったのだろう、周りでもハンカチを使う人の姿がちらほら。
ジョンの追悼のときにはスクリーンには抽象的な映像が映し出されただけだった。もしジョンの姿を映し出していたら、会場の雰囲気は一変してしまったかもしれない。抽象的な映像はポールのジョンへの思いなのか。うーん。レノン=マッカートニーは永遠に誰も入り込むことの出来ないライバル同士なんだろう。

続いて「Eleanor Rigby 」「Here, There And Everywhere 」「Michelle 」とビートルズナンバー。「Michelle 」は明らかに日本人向けの選曲だろう。他国ではやっていなかったし。スクリーンにパリの映像が流れたのはちょっと恥ずかしかった。この曲が流れている間、前の列の50代夫婦らしきカップルが寄り添っていた。

ここで「大阪だけだよ」と言ってアルバム「FLAMING PIE」から1曲。他国でも東京でもやってなかったそうで、ほんとに大阪だけだったみたいだ。ちなみに、このアルバム名は、かつてジョンが「ビートルズの名前の由来は、あるとき Flaming Pie(燃えさかるパイ)に乗った男が『お前たちはビートルズだ』と言ったからなんだ」とふざけて答えたことがあることに由来しているそうだ。

続いて「Band On The Run」のイントロ。アコースティックからバンド構成に戻るのにピッタリの曲。スクリーンに客席の映像が映し出される。「WE LOVE WINGS」「BAND ON THE RUN」のプラカード、ウィングスのロゴマークがあちこちにたくさん。意外だったけど、30代くらいの人たちにとってはビートルズよりウィングスがリアルタイムだったわけで、ウィングスに思い入れの大きい人たちも多いんだなぁと再確認。
続いて「Back In The U.S.S.R 」。これもライブ向きの曲。ビーチボーイズのパロディコーラスにジョン、ジョージの声が聴こえないのが少しさびしい。

そして「May'be I'm Amazed 」。私はここで初めて泣いた。ビートルズ解散前に発表された初めてのソロアルバムに収録されている曲。当時の邦題は「恋することのもどかしさ」だっけ。もともと大好きな曲だったけど、あまりに感情たっぷりに歌うので気づいたら泣いていた。泣くならビートルズナンバーだと漠然と思っていたので自分でもちょっと驚き。この1曲だけで1万円の価値はあると思えた。

「Let 'Em In 」「My Love 」とウィングス時代の曲が続く。「My Love 」は「リンダのために」と日本語で紹介。今さらながら、ポールはジョン、リンダ、ジョージと親しい人たちとの別れを次々と経験しているんだと思ってグッときた。

「She's Leaving Home 」も「Sgt.Pepper's 〜」からの曲。ドラムス担当のでかいアフリカ系男性のコーラスがなかなかよかった。「Can't Buy Me Love 」で「ヤァ!ヤァ!ヤァ!」の映画シーンが映し出され、中学時代、大阪の小さな公会堂にフィルムコンサートを見に行った記憶がよみがえり、また涙がにじむ。

コンサートの定番「Live And Let Die」ではスクリーンに「007/死ぬのは奴らだ」の映像が映し出される。マグネシウムに火柱は大迫力。「心臓に悪い」と胸に手をあてる仕草のポール。1曲ごとに観客に語りかけ、何らかの仕草をみせるポールはとても暖かく感じられた。観客とコミュニケーションをとり、バンドのメンバーにも気配りをみせるポールは、映画「レット・イット・ビー」のポールとは別人のよう。

そして、ついに「Let It Be 」。実は今でもこの映画を観ると泣いてしまう。寒々とした映像にメンバーの複雑な思いが交錯し、見ているだけでツライ。「Let It Be」をピアノで弾き語るポールの後ろになぜリンゴがドラムを叩いていないのか?なぜジョージがあのヘタウマなソロを弾いていないのか?なぜジョンがだるそうにサイドをかき鳴らし、コーラスをとっていないのか?こう思うともう涙は止まらない。
たたみかけるように「Hey Jude 」。この曲、昔はあまり好きではなかったが、「プラハの春」のドキュメンタリーでチェコの人々の心を癒したと知ってから気になる曲。ジュード・ロウはこの曲が大好きで芸名つけたとか。近々ブライアン・エプスタインの映画を作るらしい。「Na,Na,Na〜」の部分は大合唱。誰でも歌える曲というのがすごい。うちの子供たちが最初におぼえたビートルズ・ナンバーもこれだった。

ここでアンコール。すぐに登場して「The Long And Winding Road 」。「終わり」のイメージが強くてあまり好きになれない曲だ。続く「Lady Madonna 」ではスクリーンに数々の女性の映像が映し出された。マザー・テレサ、マリリン・モンロー、ツィギー、アレサ・フランクリン、ビリー・ホリディ、ティナ・ターナー、オリンピックやいろいろな場面で活躍した女性たち…そういえばエリザベス女王よりダイアナ妃のほうが大きく映し出されていたっけ。
「I Saw Her Standing There 」では東京公演最終日、観客4人をステージに上げて歌い踊ったとか。今夜はどうだったのかな。

アンコール2回目。「Yesterday 」が終わると、「もう家に帰る時間だ」とポール。ああ、さびしいよ。
最後はレスポールに持ちかえ、「Sgt.Pepper's Lonely Hearts Club Band〜The End 」。これがなかなかハードでカッコよかった!
「Hello Goodbye 」で始まり「The End 」で終わるなんてキマッてる。ポールって歌も巧いけどギターも巧い!
大満足の2時間40分だった。ありがとう、ポール!


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