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大かむろ


大かむろ

なんか、雨戸のあたりで昔がしたというので障子をあけると、大きな顔のお化けがニューッと現れる。これを「大かむろ」、または「たんたんぼう」といって狸が化けるものとされる。
 もともと妖怪というのは、その姿形を目撃したという人はごく少ない。だまされたとか、奇妙な倒験をしたといった話ばかりで、しかと形をみとどけにくいものだから、狸が化かすとか、狐が化かすとかいわれればそうとも受け取れる。狸の本場は四国の徳島と佐渡島だが、徳島の狸は少し盛大すぎて妖怪も狸のせいとされ、狸火やら狸の物真似、いたずら、化け方とか入れると、かなりの妖怪がその中にふくまれてしまう。
 物真似としては、鋸の音とか蹄の昔、狸列車という汽車の音から葬式・婚礼といったものや、「小豆あらい」という小豆の音をさせる妖怪のまねもする。また『砂ふらし」という妖怪、砂かけ婆」のようなものまで狸のせいとされる。この「大かむろ」もそうした化け方の大家の狸ならではのおどろかせ方である。

解説 水木しげる